

工芸作物の仕事に求められている人物とは、まず几帳面さです。タバコ、コーヒー、お茶といった工芸作物は天候の変化などの些細な条件でクオリティが大きく変わってしまう可能性があります。また、病気や害虫などの被害を受けることも多く、根気強い毎日の対策が求められます。必要な要素を考えながら、淡々と仕事をこなせるタイプの人にとってはやりがいのある仕事となるでしょう。
健康面も重要な要素です。農業は繁忙期に入れば、丸一日休むことが難しくなる業界ですが、繊細な作物の多い工芸作物であれば、より休みは少なくなります。朝早くから起きて、夕方まで働き続ける毎日に耐えられる体力は必須だといえます。また、どんな困難でも根をあげない精神的なタフさも要求されるでしょう。
工芸作物は手間隙をかければかけるほど出来上がりが良くなる作物なので、職人気質の人の肌に合っている仕事です。お金を稼ぐ、生活を豊かにするという意識ももちろん大切ですが、他の畑よりも質の高い作物を収穫するのだというプロフェッショナルのプライドが、ハードな仕事をこなすモチベーションとなるでしょう。

工芸作物の仕事を始めるにあたって、特に必要とされる免許や資格はありません。しかし、取得しておいた方が絶対に便利なのが普通自動車免許です。農作業では移動が頻繁にあるのと、持ち運ぶ機材が多いのが特徴です。そんなとき、自動車を運転することができなければ、道具を運ぶだけでかなりの体力と時間を浪費してしまうでしょう。仕事を始める前には自動車免許を取得し、軽トラックなどの安い車でいいので用意しておくことをおすすめします。
新たに工芸作物の業界に参入したい人からすると、初心者でもやっていけるかどうかは気になるところです。
しかし、コミュニケーション能力があり、地元の経験者に教わりながら知識を吸収できる人であれば、問題なく仕事はできます。分からないことは積極的に近所の人や農協に聞きに行くようにしましょう。
多くの場所で、新規参入者を歓迎する体制を整えてくれているのもプラス要素です。後継者問題に悩まされている農業では、新しく携わろうとする人が疎ましく思われることは少なく、むしろ周囲から期待されて仕事ができるので充実感を味わえるでしょう。

2009年の調査によれば、工芸作物を主として生産している農家の平均年収は351万円でした。
(http://agri-biz.jp/item/detail/3153?page=1)。サラリーマンの給料と比べれば安い気もしますが、ここには老夫婦だけで生産を行っているような小規模な家庭も含まれているので、一概に「工芸作物は儲からない」と決め付けることはできないでしょう。現に、お茶畑、サトウキビ畑などの大農園を経営し、人手を雇って企業化しているような農家も存在しているからです。
また、兼業農家にするという手段もあります。工芸作物だけを作り続ける専業農家ではなく、会社員や在宅ワークなどの仕事と両立させながら年収を増やす方法です。現在でも、多くの家庭が兼業農家として生計を立てています。労働時間ですが、繁忙期になると早朝から夕方まで収穫が続くことも多く、生産物の鮮度との戦いになるため、休日も取れない期間もありえます。拘束時間も長く、かなりハードな仕事ではあります。逆に、収穫が終わると仕事が落ち着き、種をまいたり畑を耕したり、次の生産準備をゆっくりしたペースで行っていきます。こうしたリズムの波も農業の特徴だといえます。
